最終更新日:2021.03.29
公開日:2020.10.07
- プログラミングゲーム
- ロボットプログラミング
【イベントレポート】受験・就職などに繋がる? 発達障害のある子供とプログラミング教育
ご好評だったセミナーの内容をご紹介!『発達障害のお子さんの将来の可能性をひろげるプログラミング教育』
LITALICOワンダーでは、2020年7月~8月にかけて、「夏の特別onlineイベント2020」と称して、子供のプログラミング教育に関連した保護者の方向け無料セミナーや子供向けワークショップなど、多数のイベントを実施しました。
満員のイベントが多数となりましたが、特に多くの方にご参加いただき、「参考になった」と好評だったイベントの内容を特別にご紹介します。
本記事でご紹介するのは、8月1日と8月8日に実施した『発達障害のお子さんの将来の可能性をひろげるプログラミング教育』セミナーです。
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登壇者 LITALICOワンダー サービス開発グループ 和田 沙央里(わだ さおり)
登壇者
ITALICOワンダー サービス開発グループ 和田 沙央里(わだ さおり)LITALICOワンダーのカリキュラム・教材・研修開発等を担当。300名以上・3年間の指導歴あり。大学では発達心理学と教育心理学を専攻。関西の教育NPO法人で不登校児童の家庭教師/メンタルフレンドを経験。卒業後は都内の大手IT企業にて金融系基幹システム開発後、現職。特別支援学校との共同研究実績あり。著書『使って遊べる!Scratchおもしろプログラミングレシピ』翔泳社
発達障害のある子供が、将来自立して活躍するために必要な力を身につけるには?
「子供が将来、自分の力で困難を乗り越え、社会で自立するために、今どんな力を身に着けておけば良いのか」
発達障害のある子供をお持ちの保護者の方には、このような悩みを持っている方も多いのではないでしょうか。
子供の将来を見据えて必要なことのひとつに、「自分で考え、やりとげる力」を身に着けておくことが挙げられます。
そして「自分で考え、やりとげる力」を育むための手段として、今、プログラミング教育が注目されているのです。
そもそもプログラミング教育って、どんな力がつくの?
2020年4月から、全国の小学校でプログラミング教育が必修化されています。
プログラミング学習の目的は「プログラマーやエンジニアになるためのスキルを身につけること」ではなく、「将来どのような職業に就くとしても、時代を越えて求められる力を育むこと」です。
今の時代にプログラミング学習が求められる理由は大きく2つあります。
1つめは、現代はIT企業に就職しなくても、「情報技術をうまく活用しながら問題を解決していくこと」が不可欠な社会になりつつあるからです。コンピュータの仕組みを理解した上で上手に活用していく力は、子供たちが大人になったときのどんな職業にとっても必要だといえます。
2つめは、プログラミングの学習を通して「何をどうすれば自分の願いがかたちになるか」を論理的に考える力を育むことができるからです。プログラミング学習では「自分で考え試行錯誤し、やり遂げること」を求められます。その過程で、以下のような力がつくといえます。
・「論理的思考力」=筋道を立てて考えて、自分で結論を見つける力
・「創造力」=正解がない中でも、自信を持って新しい答えを生み出せる力
こうした力は、将来どのような進路を選択したとしても、幅広い場面で活かすことができるでしょう。
発達障害のある子供とプログラミング学習の相性がいいって本当?
LITALICOワンダーは、発達障害のある子供とプログラミング学習の相性は良いと考えています。
その理由をご紹介します。
興味・好きなことから始められるから
子供に発達障害があり、その特性や興味の偏りから「子供がプログラミングに興味を持たないのでは」「習い始めても続かないのでは」といった不安を感じている保護者の方が、LITALICOワンダーにも多くいらっしゃいます。
しかし実際に始めてみると、考えを改める方がほとんどです。
なぜならプログラミングは子供たちが自由にものをつくるための手段であり、その子の好きなものを起点に始めることができるからです。
例えば、お気に入りのキャラクターを使ったゲームやアニメーションづくり、大好きな乗り物のロボットや3Dモデルなど、多様なテーマでプログラミングを学び始めることができ、その子の好奇心に火をつけることができます。
最初は自分の好きなものしかつくらない子供も、スタッフが声のかけ方やプログラムを工夫することで、創造力や興味の幅が拡がるケースもあります。
IT機器が、コミュニケーションの困難をカバーしてくれるから
IT機器を使用することで、発達障害の特性のなかにあるコミュニケーション面の困難をカバーすることができます。
例えば1つのことに集中しすぎて切り替えができなくなる「過集中」の特性は、タイマーをセットして視覚的に残り時間を伝えることで、切り替えられるよう工夫することができます。
他にも、ある特定の場面で話せなくなってしまう「場面緘黙症」や、口頭コミュニケーションに困難がある場合、iPadやパソコン画面への文字入力や絵検索でやりとりを促すことができます。
また、不登校のため外出が難しい場合や、初めての人・場所に苦手意識がある場合、オンライン授業を利用して自宅から受講することもできます。
LITALICOワンダーの生徒にも、自宅からオンラインで授業を受けることを選択する子がいます。
カメラオフの状態から始めて少しずつ慣れていくなど、その子のペースを尊重して進めることができます。
自己肯定感をあげやすいから
プログラミングを通してその子のこだわりや個性を表現することで、長所として生かされる場面が多くあります。
また、プログラミングで作品をつくり、アウトプットすることで、自分のアイデアが人に伝わりやすくなり、ほめられる機会も増えるといえます。
例えば、自分の子供がプログラミングの技術を自ら学んでつくったゲームやアプリを見たら、自然とほめたくなるのではないでしょうか。
また、プログラミングはその構造上、自分でスモールステップに分解して進めることができます。
そのため達成感を連続的に感じることができ、自己肯定感を上げることに繋がるといえます。
進学や就職の選択肢が広がるから
発達障害の有無に限らず、子供の受験や就職を心配する保護者は多いと思います。
小中学生からプログラミングを始めることで、自分の好きなことや得意分野に早く気づき、IT技術分野に限らずさまざまな分野で自ら目標を見つけ、進学や就職に向けて動けるようになるというケースがあります。
●受験にプログラミングが役立ったケース
・小学校・中学校と不登校だったAさん。
プログラミング学習を通して自信をつけ、高校はゲームプログラミングを専門で学べる学校を志望。
オープンスクールで何校か見て自分で志望校を決め、自己推薦入試には自分の作品を持ち込んで合格しました。
・プログラミングでアニメーション作品などをつくる中でアート表現やデザインに関心を持つようになったBさん。
もっと専門的に学びたいと興味が広がり、美術系の高校や美大に合格しました。
●就職にプログラミングが役立ったケース
・生徒としてLITALICOワンダーに通っていた、Cさん。
卒業後、LITALICOワンダーのアルバイトでプログラミングを教えるメンターとして活躍。
その後、ゲーム会社へ就職が決まりました。
LITALICOワンダーには、発達障害の子供はどのくらい通っているの?
LITALICOワンダーには、グレーゾーンも含めてだいたい3割ほど、発達が気になる子供たちが通っています。
LITALICOワンダーでは発達障害の有無に関わらず、一人ひとりの子供の学習に必要な支援や環境について保護者と相談した上でプログラムを組んでいます。
みんなが違って当たり前の環境では「障害」というラベルは気にならなくなります。子供の個性は、「障害」というラベルを超えて、ゲームやロボットなど作品の独創性に現れるものです。
一人ひとりの個性が作品を通して認められ、自信につながっていくような教室でありたいと考えています。
支援例
●集中が続きづらい子供の場合
座席の配置や音声のコントロールなどで、その子が没頭できる学習環境をつくります。
自分のペースで休憩をとることもできます。
●不安が強く、入室できない子供の場合
まずは担当スタッフと信頼関係を構築することから始め、徐々に慣れるようサポートします。
自宅からオンラインで、カメラオフにした状態から受講を始めることも可能です。
まとめ
プログラミングを始めることに対してハードルの高さを感じる方もいるかもしれませんが、実際は、子供のスキルや関心にあわせて柔軟にスタートできます。
LITALICOワンダーが無料で実施している体験授業は、パソコンが初めての子供でも楽しく取り組める内容になっています。
「子供が集中して取り組めるかどうか分からない」「初めての環境が不安」という方も、事前にお電話でご相談いただくことができます。
子供の将来に繋がる学びがしたい方や、発達障害を持つ子供の個性を伸ばしていきたいという方など、少しでも興味を持っていただけたら、まずは無料で体験してみてはいかがでしょうか。
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監修LITALICOワンダー サービス開発グループ 和田 沙央里(わだ さおり)
監修
LITALICOワンダー サービス開発グループ 和田 沙央里(わだ さおり)2014年3月株式会社LITALICOに入社。5歳〜高校生の子どもたちが通うIT×ものづくり教室「LITALICOワンダー」の立ち上げで渋谷教室の開設当初から約3年間、300名以上の通塾生徒にプログラミングの指導を続けた。2016年度は総務省「若年層に対するプログラミング教育の普及推進」事業のプロジェクト責任者を務めた。現在はカリキュラム・教材開発に携わる。大学では発達心理学・教育心理学を専攻し、卒業後は都内の大手IT企業で金融系基幹システムの開発に従事、現職に至る。
著 :『使って遊べる!Scratchおもしろプログラミングレシピ』翔泳社
監修:『スラスラ読める UnityふりがなKidsプログラミング ゲームを作りながら楽しく学ぼう! 』インプレス社
監修:『子どもから大人までスラスラ読める JavaScriptふりがなKidsプログラミング ゲームを作りながら楽しく学ぼう! 』インプレス社