最終更新日:2023.11.14
公開日:2022.09.30
- モンテッソーリ教育
モンテッソーリ教育とは?考え方や内容、教具について解説します
乳幼児の教育について調べていると「モンテッソーリ教育」という言葉をよく目にするのではないでしょうか?
モンテッソーリ教育とは、子どもは「自己教育力」という、自分で自分を育てる力が備わっていると考える教育法です。
100年以上の歴史があり、日本でも多くの園などで取り入れられています。
この記事ではモンテッソーリ教育の考え方や内容、モンテッソーリ教育で使用する教具などについて紹介します。
モンテッソーリ教育とは
モンテッソーリ教育はマリア・モンテッソーリにより提唱された、100年以上の歴史がある教育法のことです。
モンテッソーリ教育は、子どもには自分を育てる力が備わっているという「自己教育力」に注目し、その自己教育力を引き出すために大人が環境を用意していくことが大事という考えを持っています。
現在では世界110以上の国でモンテッソーリ教育が実践されているといわれています。
マリア・モンテッソーリとは?
モンテッソーリ教育を提唱したマリア・モンテッソーリは、イタリアにおける女性として最初の医学博士として知られる人物です。
モンテッソーリは子どもには生まれながらにして自分で学んでいく「自己教育力」があり、適切な環境があれば子ども自身で自発的に行動し成長していくと考えました。
そして1907年に知的障害のある子どもの治療教育を基礎にして、ローマに幼児教育をおこなう「子どもの家」を設立します。
その子どもの家が世界中から注目を集め、モンテッソーリのおこなった教育方法はのちに「モンテッソーリ教育」と呼ばれるようになりました。
また、モンテッソーリ教育を実践する場所のことを「子どもの家」と呼ぶようにもなりました。
モンテッソーリ教育の目的は?
モンテッソーリ教育は「自立していて、有能で、責任感と他人への思いやりがあり、生涯学び続ける姿勢を持った人間を育てる」ことを目的としています。
その目的を達成するためにモンテッソーリ教育では、子どもが自発的に学んでいく姿勢が尊重されています。
そのため大人は子どもの興味や発達段階を観察して、子どものしたいことが自由にできるように環境を整えていく援助者としての姿勢が求められます。
モンテッソーリ教育を取り入れた教育機関では、この目的に沿ってさまざまな教育がおこなわれています。
具体的な方法はその教育機関によって多少異なっています。
例えば通い方も、週5日通うことを想定した場所もあれば、週1日の習い事のように通う場所もあるなどさまざまです。
モンテッソーリの教育思想(考え方)とは?
ここではモンテッソーリ教育の思想(考え方)を紹介します。
モンテッソーリ教育の基本的な考え方は「子どもには生来、自立・発達していこうとする力(自己教育力)があり、その力が発揮されるためには発達に見合った環境(物的環境・人的環境)」が必要である」というものです。
モンテッソーリ教育でよく使われる言葉として「Help me do it myself(自分でできるようになるのを手伝って)」があります。
あくまで行動をするのは子どもであり、大人は子どもをよく観察し、発達の段階にあわせて教具(※)を提示するなどの手伝いをしていくという考えです。
※教具(きょうぐ):モンテッソーリ教育で使用する教材のこと。
自己教育力と敏感期
モンテッソーリ教育でよく出てくる「自己教育力」とは、自立や発達の原動力は子ども自身の中にあり、子どもは自分に必要な時期に、自分にとっての発達の課題に取り組んでいく力が備わっているという考えです。
それを具体的に表しているのが「敏感期」と呼ばれる時期です。
敏感期はある特定の事柄に対して強い感受性を発揮する時期で、子どもは敏感期に適切な環境があれば対象の事柄の知識をいとも簡単に吸収するとされています。
敏感期には「言葉の敏感期」「運動の敏感期」などさまざまな種類があります。
周りの大人は子どもを観察し、敏感期の種類に合わせたサポートをしていくことで子どもの成長を促していく援助者としての役割が求められます。
モンテッソーリ教育における環境
モンテッソーリ教育では子どもが自己教育力によって自ら成長していくためには、大人が適切な環境を整えることが大事とされています。
環境には「人的環境」と「物的環境」があるとされています。
何かを学ぶための空間や教材などの物的環境が整えられていたとしても、子どもがそれらの活用方法が分からなければ、自己教育力は十分に発揮されません。
そこで大人が「人的環境」として子どもと物的環境をつなげる橋渡しをしていきます。
たとえば、子どもが数字を学ぶための教具(物的環境)があったとして、その使い方がわからないと適切に学ぶことはできないため、まずは大人(人的環境)が使い方をわかりやすく伝えていくなどの方法があります。
これをモンテッソーリ教育では「提示」と呼んでいます。
大人が提示をして子ども自身の「やってみたい」という気持ちを引き出していくことで、子どもは物的環境を活用し自己教育力を発揮することができるとされています。
モンテッソーリ教育の内容は?
ここではモンテッソーリ教育の内容の一部について紹介します。
モンテッソーリ教育では3歳から6歳までを「意識の芽生え」の時期と呼んでいて、この時期は子どもがそれまでに学んできたさまざまな事柄を、意識的に整理、秩序化していくとされています。
この時期に子どもの自己教育力を発揮させる環境として主に5つの教育分野があります。
5つの教育分野には以下の種類です。
- 日常生活の練習
- 感覚教育
- 言語教育
- 算数教育
- 文化教育
それぞれ紹介します。
1. 日常生活の練習
画像引用:学研の保育用品「モンテッソーリ教具 日常生活練習 あけ移し用容器」
日常生活の練習とは子どもが家事や自分の身体をコントロールできるようになるための練習のことです。
モンテッソーリ教育では子どもは大人のやることを真似したがるという考えのもとに、大人が使う道具を子どもが使いやすいようにサイズを調整した教具を用意するなど環境を整えていき、使い方を提示します。
教具はサイズなどは調整しますが、たとえばコップはガラスでできていて実際に落としたら割れるといったように、実生活に近い状態にしていることが特徴です。
子どもはそういった教具などを利用して自ら身の回りのことをおこなうことで、身体の使い方を身につけていきます。
2. 感覚教育
画像引用:学研の保育用品「モンテッソーリ教具 感覚教育 円形・四角・三角板」
モンテッソーリ教育では視覚、聴覚などの感覚器官を使った練習をおこなうことにより、精確に情報が収集できるようになり知性や情緒の発達を促すとされています。
具体的には感覚教具と呼ばれるモンテッソーリ教育の教材を使用することで、感覚器官を洗練させていきます。
感覚教具には、色・大きさ・形などを視覚や触覚でわかるようなものがあり、そういった教具を使うことで子どもは自然と感覚器官を使った練習ができるようになっています。
モンテッソーリ教育において感覚教育はこの後紹介する「言語」「算数」「文化」教育という知的教育分野の基礎を作っていくための大切なものとされています。
3. 言語教育
画像引用:学研の保育用品「モンテッソーリ教具 言語教育 絵カード合わせ」
モンテッソーリ教育の言語教育では、子どもの言葉の発達に合わせたステップがあり、語彙を豊かにすることからはじまり、最終的に文法を学んでいきます。
子どもの発達や興味関心に合わせて絵カードなどの教具を使って語彙力を伸ばしていきます。
子どもが文字に興味を持つようになったら、パズルのように並び替えることで文章が作れる教具や文字練習帳といった教具を使って言語教育を進めていきます。
4. 算数教育
画像引用:学研の保育用品「モンテッソーリ教具 算数教育 木製数字あわせ」
モンテッソーリ教育の算数教育は、単に数を数えたり計算するだけではなく、数字を具体的に触れる形で覚えていくという特徴があります。
算数教具には形状や色などで表されていて、子どもは教具を通して触覚などの感覚も使いながら数を身につけていきます。
算数教育にも段階があり、まずは具体的に数を理解し、最後は暗算という抽象的な段階に進むことで無理なく算数を学んでいくことができるとされています。
5. 文化教育
画像引用:学研の保育用品「モンテッソーリ教具 文化教育 地球儀と地図パズル(地球儀 大陸) 」
モンテッソーリ教育の文化教育は、言葉と数以外を対象とした幅広い分野への教育のことを指します。
歴史、地理、動植物など、小学校の社会科、理科に相当する分野を扱っていて、子どもの興味を広げていくことを目的としています。
生命の神秘への興味や芸術に関する表現力など、さまざまなことを学んでいくことがモンテッソーリの文化教育の特徴といえます。
モンテッソーリ教育の教具とは?
モンテッソーリ教育では教具を使用することが多くあります。
教具とは子どもが自発的に学んでいくための教材のことで、子どもの発達段階に合わせてサイズや素材などを考慮して作られています。
たとえば感覚教育のための教具には、木で作られた10本の円柱とその円柱に対応する穴が開いた木の土台がセットになったものがあります。
円柱と穴は1対1の関係で、正しく対応させないと差し込むことができない仕組みになっていて、子どもはこの教具を使用することで、大きさの概念を学んでいくことができます。
画像引用:学研の保育用品「モンテッソーリ教具 感覚教育 新円柱さし1(高さと直径が減少)」
ほかにも算数教育のための教具、文化教育のための教具など多くの種類があり、年齢によっても分かれています。
モンテッソーリ教育の教具は市販のものもあれば、状況に応じて手作りする場合があります。
手作りする際も、子どもが手に取りやすいような形状にするなど工夫が必要になります。
モンテッソーリ教育に関する本や教材は?
モンテッソーリ教育について書かれた本は数多く出版されています。
モンテッソーリ教育について提唱者であるマリア・モンテッソーリ自身が著した「子どもの発見」「—小学校における— 自己教育」といった本があります。
提唱者自身が書いたものなので、モンテッソーリ教育の思想など基本的なことを学ぶことができる本となっています。
日本モンテッソーリ教育綜合研究所「マリア・モンテッソーリ主要著書」
そのほかにも、モンテッソーリ教育についての本はたくさんありますので、インターネットのショップや、図書館などで検索してみるといいでしょう。
モンテッソーリ教育について学べる講座
モンテッソーリ教育について学べる講座も用意されています。
日本モンテッソーリ教育綜合研究所の教師養成センターでは、国際資格を取得できるコースから、モンテッソーリ教育の基礎が学べる入門コースなど多くの講座が用意されています。
モンテッソーリ教育の考え方や具体的な教具の使用方法などが学べるため、本格的にモンテッソーリ教育を学んでみたいという方は検討してみてもいいでしょう。
モンテッソーリ教育のまとめ
モンテッソーリ教育とは子どもは「自己教育力」という自分で学んでいく力があるという考えにもとづいた教育法です。
モンテッソーリ教育では大人は子どもの自己教育力を生かしていくため、教具を使用するなど環境を整えていくことが大事とされています。
現在モンテッソーリ教育は世界中で実践されていて、日本でも取り入れている教育機関が多くあります。
週5日しっかり通うことを想定した場所もあれば、習い事のように週1日通っていく場所もあるため、興味のある方は子どもの状況も含めて検討してみるといいでしょう。