最終更新日:2023.01.24
公開日:2021.07.16
- オススメ
デジタルファブリケーションとは?意味や事例、学べる教室などを解説
「デジタルファブリケーション」と言われても、何のことかピンとこない方もいらっしゃるのではないでしょうか。
しかし「3Dプリンター」や「レーザーカッター」と言われれば、想像できる方も多いのではないでしょうか(デジタル工作機械については後ほど詳しくご紹介します)。
実際、デジタルファブリケーションの技術は私たちの身の周りにある製品の制作に用いられているほか、教育の現場にも取り入れられています。
そこで本記事では、デジタルファブリケーションについての説明やメリット、活用事例などについて、解説を交えながらご紹介します。
デジタルファブリケーションとは
デジタルファブリケーションとは、デジタルデータ化された文字や画像などをもとに、デジタル工作機械で木材や樹脂などのさまざまな素材を用いて、ものづくりを行う技術のことです。
デジタル工作機械には、前述した3Dプリンターやレーザーカッター、ロボットアームなど、ものづくりに使われているさまざまな機器があります。
現在、その多くは「デスクトップ・ファブリケーション」と呼ばれています。
パソコンに接続して利用できるため、個人でも自由にオリジナル製品をつくり出せるようになっていることが魅力です。
デジタルファブリケーションの認知度
デジタルファブリケーションは個人レベルで自由なものづくりができる技術として、今や世界規模で活用されています。
しかしながら日本での認知度はまだまだ低く、総務省が実施したアンケート調査によると、日本の就労者の約7割がデジタルファブリケーションについて「ほとんど聞いたことがない」と回答しています。
一方、アメリカでは「ほとんど聞いたことがない」と回答した就労者は3割強にとどまっており、日本とアメリカでは認知度に約2倍もの隔たりがみられます。
また、デジタルファブリケーションの実施意向についても、米国の就労者では5割以上が「実施してみたい」と回答したのに対し、日本は約2割と米国の半分以下でした。
デジタルファブリケーションがもたらすものとは?
上述したとおり、日本でのデジタルファブリケーションの認知度は諸外国にだいぶ遅れを取っています。
ただし、デジタルファブリケーションが日本の未来にもたらす効果は大きいと予想されています。
例えば、工作やものづくりが手軽になることから、「自分で使いたいものは自分でつくる」という「個のニーズ」が高まります。
これにより、デザインなどのテクノロジーに関わる人が自然と増え、新たなイノベーションが生まれる可能性があります。
また、従来のデジタル工作機械は数百万〜数千万円と高価だったため、一般人では欲しくてもなかなか手の届かないものでした。
しかし、技術の発展によりデジタル工作機械も軽量・小型化が進み、安価になっているため、個人間にも普及しやすくなりつつあります。
ファブ社会とデジタルファブリケーション
デジタルファブリケーションの技術は、個の可能性を広げると同時に、「ファブ社会」という新たな概念を社会にもたらしています。
ファブ社会とはインターネットとデジタルファブリケーションが結合することで、従来にはなかったものづくりが行われ、ネットワーク上で流通・販売が行われる社会のことです。
ファブ社会が浸透することで、年齢や性別、コミュニティ、立場の違いなどの垣根を超えて、個人間の交流が活発になることが予想されます。
その結果、地方再生、さらには経済発展にもつながるといわれています。
未来がそのような方向に向かっていけば、子育てにおいてもファブ社会を意識した教育が求めることができるようになることは想像に難くないでしょう。
デジタルファブリケーションで使われるデジタル工作機械
ここでは、実際にデジタルファブリケーションで使われている代表的工作機械について、詳しく触れていきましょう。
レーザーカッター
レーザーカッターは、木材やアクリルなどの素材にレーザーを当て、好みの形に切断したり、彫刻を施したりする機器です。
切断精度や切断速度に優れており、デジタルデータをもとに簡単な操作で自分の思う構造を正確に表現できることが特徴で、サインやアパレル、グッズなど幅広い用途で使われています。
注意点としては、光線で部材を切るため焦げ目がつく可能性があることです。
安価なモデルであれば、5万円ほどで購入することができます。ニーズに応じて拡張フレームや高出力レーザーヘッドなど、パーツを交換することでより広範囲かつ高精度な加工にも対応可能です。
3Dプリンター
3Dプリンターは、3Dスキャナーにより取り込まれた3Dデータなどをもとにパーツを印刷する機器です。
平面印刷のプリンターとは異なり、樹脂や粉末状の素材を積み重ねて立体物を再現します。
家庭用ではお菓子の型やスマホケースづくりなどに、業務用としては機械パーツの試作品のほか、プレゼン用の模型、複雑な建築模型の制作などに幅広く活用されています。
便利な半面、出力する造形物の複雑になるほど精度が低下したり、サイズが大きくなると完成までにかかる時間も遅くなります。
価格は家庭用では3万円台、プロ仕様でも8万円台から販売されています。
3Dスキャナー
3Dスキャナーは立体物をスキャニングすることで3Dデータを書き出しできる機器で、3次元デジタイザとも呼ばれています。
立体物を再現する3Dプリンターに対し、その設計図をつくるのが3Dスキャナーになります。
立体物であれば小物からビルまでどんな物でもスキャンでき、さらには設計や企画の段階で現物を見ながら検証を行うことができることため、コストや時間の削減にもつながります。
機種はスキャン方法により接触式、非接触式、X線CTスキャンなどがあり、ハンディタイプ、据え置き型と用途に応じて選ぶことができます。価格は10万円以上の製品が多いです。
ロボットアーム
ロボットを遠隔操作し、その腕のみで部材を組み上げることができるロボットアーム。
その効果は単に人員削減にとどまらず、人的ミス軽減による品質向上や生産力の向上、コスト削減にも寄与しています。
ロボットアームの操作方法には、「マウスやキーボード、ジョイスティックで作動するもの」「専用の機器で操作するもの」などさまざまです。
施工時に住宅をロボットアームでつくるなど、建築業界においても積極的に活用されています。
多くは産業用で高価ですが、小型で安価なものでは100万円台から入手可能です。
デジタルファブリケーションのメリット
ここからは、デジタルファブリケーションがもたらすメリットについて言及していきます。主に以下の2点のメリットがあります。
子どもの教育に活用できる
デジタルファブリケーションの技術は、すでに教育現場でも活用されています。
例えば、デジタルファブリケーションコースを設置している子ども向けのITものづくり教室・LITALICOワンダーでは、3Dプリンターやレーザーカッターを使用し、設計から造形物の完成まで一貫したものづくりの授業をおこなっています。
建築デザインや都市デザインにまつわる分野では、積極的にデジタルファブリケーション設備を取り入れる建築系の大学や大学院が増加しています。
新しいイノベーションや発想が生まれる
上述の通り、個人が自分の欲しいものをつくるためにデジタルファブリケーションを積極的に活用することで、新たなイノベーションが生まれやすくなる社会になります。
ファブ社会では、年齢や立場、国籍さえも関係なく、さまざまな人が交流を図りながらものづくりを行います。柔軟な発想に富んだ子どものアイデアが採用され、形になる可能性も大いにあるでしょう。
デジタルファブリケーションは、日本の社会に大きな価値をもたらすことが期待されています。
デジタルファブリケーションの体験ができるファブラボとは?
デジタルファブリケーションに関する認知度、また理解度では諸外国に大きく遅れをとっている日本ですが、それでも近年「ファブラボ」と呼ばれるデジタルファブリケーションの地域工房のネットワークが各地に広がりつつあります。
ファブラボではデジタル工作機械を開放しており、個人が自由にものづくりができる環境が整っています。要するに、誰でも使用できる図工室のようなものです。
さらには世界中にあるファブラボとインターネットでつながり、情報共有が活発に行われるなど、ファブラボ間でさまざまなコラボも展開されています。
今後、デジタルファブリケーションの認知度が高まるにつれて、ファブラボの需要も高まっていくことが予想されます。
デジタルファブリケーションの事例
ここでは、これまでに行われたデジタルファブリケーションの活用事例についていくつかご紹介します。
CAINZ工房
組み立て家具のホームセンター通販を手掛けるCAINZ(カインズ)では、「CAINZ工房」というDIYを自由に楽しむことができる工房を展開しています。
工房では、店舗で購入した材料はもちろん、自宅から持ち込んだ材料でも加工・組み立てを行うことが可能です(持込の場合は有料。購入品でも条件により有料)。
また、溶接機や切断機を備えた溶接ルーム、3Dプリンターやレーザーカッターが利用できるデジタルルームなども完備しています。
随時ワークショップも開催しており、未経験でもデジタルファブリケーションによるものづくりを十分に楽しむことができます。
たんぽぽの家
芸術文化活動を通して、障害者が生きがいを持って生活できる拠点として活動している奈良県の「たんぽぽの家」では、デジタルファブリケーションを通じて商品開発や新しい働き方を提案するなど、さまざまな活動をおこなっています。
2012年には「Good Job!プロジェクト」を始動して、デザイナーや企業、教育機関など地域で異分野をつなぐプラットフォームを構築し、障害のある人と一緒にものづくりを推進しています。
デジタル工作機器のほか、手仕事を生かした商品開発や、イベント、セミナーも定期的に開催しており、新しい働き方の提案も積極的におこなっています。
EMARF
EMARF(エマーフ)はデジタルファブリケーションを活用し、自分が思い描く通りの家具づくりができるサービスです。
テンプレートから好きな形を選び、簡単に素早くオーダーメイドの家具を製造することが可能です。従来の家具づくりとは一線を画し、設計者の手を介することなく、またユーザーが全国にある工房の中から製作する拠点を選択できるため、制作・流通コストを大幅に削減できることが大きな特徴です。
複雑なデザインにも対応し、加工シミュレーションをした後に見積りもその場で確認できることから、金銭面のトラブルも起こりづらく安心できます。
LITALICOワンダー
LITALICOワンダー(リタリコワンダー)は、首都圏を中心に新年長~高校生までの子どもを対象にプログラミング教室やロボット教室を展開しているIT×ものづくり教室です。
デジタルファブリケーションを学べる教室は?
LITALICOワンダーの「デジタルファブリケーションコース」は、子どもたちが最新のテクノロジーを活用したものづくりに触れることができる5つのコースのうちのひとつです。
以下では、そのコースについて詳しく解説します。
コース概要
小学校1年生〜高校生を対象に、デジタル工作機械を使ったものづくりを学ぶ場を提供しています。
具体的には子どもたちがパソコンやタブレットで立体物や平面をデザイン・設計し、デジタル工作機器で加工・印刷まで行い、オリジナル作品をつくることに挑戦します。
工作やものづくりが好きな子どもや、3Dプリンターなどの機器に興味がある子どもにとてもおすすめのコースです。
使用するツール・カリキュラム
制作に使用するツールは、おもに3Dプリンターと、印刷用データをつくるためのソフトウェアになります。
カリキュラムはオーダーメイドとなっており、子どもの興味にあわせて一人ひとりに合ったものづくりの機会を提供します。
中には、プログラミングを学んで自分用のパソコンづくりにチャレンジする小学生もいます。
子どもが最新のテクノロジーに関するスキルを確実に身につけながら、楽しんで自分が好きなものを制作できるコースとなっています。
デジタルファブリケーションを子どもに学ばせよう!
日本ではまだまだ認知度の低いデジタルファブリケーションですが、普及すると一人ひとりが自分がつくりたいものをつくることができる時代が到来し、新しいイノベーションが生まれやすくなる社会の実現が予想されています。
特に、個人がデジタルファブリケーションで作成したものをインターネットによって売買するファブ社会の到来は、経済の発展につながると期待されています。
そのような時代で活躍できるためにも、子どもたちにデジタルファブリケーションを学習させることはとてもいい考えです。
LITALICOワンダーでは、子ども向けにデジタルファブリケーションを学ぶことができるコースがあります。
無料体験も実施しているので、ぜひ一度お子さんにデジタルファブリケーションの世界を体感させてみてはいかがでしょうか。
-
監修 LITALICOワンダー編集部(りたりこわんだー へんしゅうぶ)
監修
LITALICOワンダー編集部(りたりこわんだー へんしゅうぶ)LITALICOワンダー編集部では、ITやものづくり、子どもの教育などに関するさまざまな記事を発信します。LITALICOワンダーは、新年長さん〜高校生のお子さんを対象にしたIT×ものづくり教室です。