最終更新日:2021.02.13
公開日:2019.04.27
- プログラミング教育必修化
2020年、小学校でのプログラミング教育必修化について【基本編】
2020年から、小学校の新学習指導要領にプログラミング教育が盛り込まれます。
プログラミング教育必修化の認知度は高まってきていますが、実際にどのような目的でプログラミング教育が実施されるのか、具体的にどのような授業が行われるかについては、ご存じない保護者の方も多いのではないでしょうか?
今回は、プログラミング教育必修化に向けて知っておきたい重要なことを5点、お伝えします。
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プログラミング教育必修化の概要と目的
2017年3月に発表された新学習指導要領で、プログラミング教育が小学校で必修化されることが明記されました。新学習指導要領の中で、プログラミング必修化の目的について、以下のように記載されています。
- ✓ プログラミング的思考(論理的思考力)を養うこと
- ✓ 現代社会がプログラミングなどの情報技術によって成り立っていることを理解し、コンピューターを使えば身近な問題解決やよりよい社会を作れることを知ること
- ✓ 既存教科とプログラミングとの繋がりを教え、各教科の学びをより確実なものにさせること
また、中学校においても2021年から施行される新学習指導要領にてプログラミング学習の内容が変更・増加されます。新学習指導要領では、計測・制御システムの仕組みや情報通信ネットワークの構成を理解し、安全・適切なプログラムの制作、動作の確認及びデバッグ等の技術的な学習を行うことが明記されています。つまり、プログラミングを生活や社会の問題解決に活用できるようにするという内容になっています。
プログラミング教育必修化の背景として、アメリカ(の多くの州)やイギリスなどの先進国が早期からプログラミング教育を取り入れており、プログラミング学習が次世代の人材育成のために効果的ということで、世界的に浸透していることが挙げられます。
小学校・中学校に共通することですが、「必修化」とはいっても「プログラミング」という教科が新設されるわけではありません。小学校では算数や理科、社会などの授業や総合的な学習の中でプログラミング学習が取り入れられます。中学校では「技術・家庭」の技術分野でプログラミング学習の内容がより充実するようになります。
プログラミング的思考って何?
プログラミング学習の狙いの一点目に挙げられている「プログラミング的思考」とは、どういった意味でしょうか?
プログラミング的思考とは、「自分が意図する一連の活動を実現するために、どのような動きの組み合わせが必要であり、一つ一つの動きに対応した記号を、どのように組み合わせたらいいのか、記号の組み合わせをどのように改善していけば、より意図した活動に近づくのか、といったことを論理的に考えていく力」を指します。
コンピューターは人と違ってあいまいな命令では機能しません。順序が間違っていたり指示が明確でなかったりする場合、コンピューターは正しく作動しないのです。そのため、具体的かつ正確な順序で指示を組み立てなければなりません。
こうしたプロセスを通して、論理的なものの考え方を養うことを目的としているのです。
社会構造の変化が導入のきっかけ
「プログラミング」といえば、IT関連の職業の方に限定したものだと思われるかもしれませんが、すでに私たちの生活の身近な部分でたくさん活用されています。そして、人工知能(AI)やモノのインターネット(IoT)の利用がますます加速することが確実ですので、今後はプログラミングに対する素養がある人とない人とでは、将来の選択肢が大きく変わります。
2018年5月に安倍首相が「プログラミングは現代の読み・書き・そろばん」という趣旨の発言をされましたが、今の社会に求められている必須スキルともいえるのです。
たとえば、アメリカではオバマ前大統領が、2013年以降、度々国民に対してプログラミングを学ぶように呼びかけています。アメリカの公立小学校では基本的に週ごとに教育カリキュラムが定められますが、プログラミング教育を積極的に行うNPO団体の活動や、その活動を支援する企業、著名人などの働きもあり、現在は多くの学校でプログラミング教育が行われています。
プログラミング教育の具体的な例
小学校では、具体的にどのようなプログラミング教育が行われるのでしょうか?
2020年のプログラミング教育必修化に向けて文部科学省、総務省、経済産業省が取り組んでいる未来の学びコンソージアムに実施事例が紹介されています。
小学校5年生の算数 正多角形をプログラミングで描く
小学校5年生の算数 正多角形をプログラミングで描く
たとえば、正三角形をノートに描く場合、小学生は内角=60度、3辺の長さが等しい、という性質を元に三角形を描きます。これを、プログラミングソフトを使用する場合は、以下のプログラムになります。
- 1. 80マス線を引く
- 2. 120度回す
- 3. 80マス線を引く
- 4. 120度回す
- 5. 80マス線を引く
大きなポイントは回すときの角度で、算数の授業では内角のみを学習しますが、プログラミングを正確に行うには外角を使用しなければなりません。その理由を考え、正四角形、正六角形、正八角形などさまざまな図形に応用することで、図形の性質についての理解を深めます。
小学校3~6年生総合学習 まちの魅力PR 使用ソフト:Scratch
プログラミングを活用した総合学習では、観光客に安心して街の魅力に触れてもらうための案内方法を学ぶ学習が紹介されています。学習は以下の3段階で行われます。
- 1. 街の魅力について考え、おすすめするスポットについてプログラミングによってタッチパネルの案内表示を作成
⇒どんな情報をどのように発信するべきか、実際に街にはどんなタッチパネルが設置されていて、どのように人々に役立っているか、などを考え、発表や相談をしながら案内表示を作る
- 2. 駅に作成した案内表示を設定し、利用状況を測定。利用頻度が高まるように改良を行う
⇒設置先の人から実際に改善点や要望を聞く(マナーについての案内を入れてほしい、目印となる看板を書き加えてほしいなど)
- 3. 実際に観光PRを行っている商業施設や駅などの担当者にインタビューを行い、子供たち自身が街の魅力に寄与できることを理解し、発表する
これらの例の他にも、レゴ® WeDo 2.0のロボットを活用して電気を無駄なく使用するプログラミングを考えたり、Scratchを使って都道府県の特徴を組み合わせて47都道府県を見つけ、名称と位置を確かめるプログラムを作成したりするなどの取り組みが行われています。
ポイントとしては、先生も生徒も操作しやすいソフトが用いられる、ということです。そして、プログラミングを使って学習の理解度を深めるということです。
プログラミング教育の問題点
メリットの多いプログラミング教育ですが、小学校や中学校におけるプログラミング教育に関しては問題点や課題についても指摘されています。
一点目は、教員の負担面です。プログラミング教育の必修化は新学習指導要領の一つの項目であり、他にも小学校5・6年生の外国語科(英語)の新設や「主体的・対話的な深い学び」の対応などさまざまな項目があります。特に小学校の先生は、基本的には担任の先生が全て対応することになるため、教員の負担増が懸念されています。
二点目は環境整備についてです。プログラミング教育を行うための教育用PCやタブレット、ネットワーク環境の整備、授業用の機材などICT環境の整備にまとまった費用が掛かる点が懸念されています。
プログラミング教育の今後の展開
2020年の必修化が間近に迫り、自治体によっては全国の必修化に先駆けてプログラミング教育を行っているところも少しずつ出てきています(千葉県柏市、埼玉県戸田市など)。
また、「未来の学びコンソーシアム」が運営する「小学校を中心としたプログラミング教育ポータル」でプログラミング学習の具体的な進め方や題材が公開されており、同様の内容が全国の小学校で実施される予定です。
2019年9月には、未来の学びコンソーシアムと大手企業を中心とした民間の協賛企業との連携で、プログラミング教育推進月間として数々の施策が行われることになっています。具体的な内容は公開されていませんが、必修化に向けて教材や学習内容の選定などが急ピッチで取り組まれているところです。
さらに、プログラミング教育必修化の流れは、将来の大学入試にもかかわってくる可能性があります。政府は2024年度以降の大学入学共通テスト(2021年度以降センター試験に変わって導入される予定の試験)において、情報科の内容を再編してプログラミングやネットワークに関する「情報I」という科目を新設することを検討しています。
まとめ
プログラミング教育の重要性は世界の多くの国々で叫ばれていて、もはやグローバルスタンダードです。しかし、諸外国と比べれば日本のプログラミング教育水準はかなり低いのが現状です。これから機械化、人材のグローバル化がますます進む社会において、子供たちが将来活躍できる人材になるためにプログラミングを学ぶことは非常に重要なことです。
2020年から小学校で必修化されますが、プログラミングを体系的にしっかり学ぶにはプログラミング教室での学習がおすすめです。お子さんのスキルや興味に合わせて、さまざまなツールや専門的な助言が受けられるプログラミング教室を、ぜひ探されてみてはいかがでしょうか?
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ライターマーケティング戦略本部 マーケティング部 ワンダーG 今井 彩碧(いまい あやみ)
ライター
マーケティング戦略本部 マーケティング部 ワンダーG 今井 彩碧(いまい あやみ)中学3年生でプログラミングと出会い、高校1年生でエンジニアとして社会に出る。その後 高校在学中はプログラミング教室数社にて小学生〜就活生への指導・教材開発や、教育系ベンチャーの起業などに携わる。高校卒業後の2018年8月、株式会社LITALICOに入社。5歳〜高校生の子どもたちが通うIT×ものづくり教室「LITALICOワンダー」にて、子どもへの授業提供や新規教室の立ち上げを経験。現在は同社マーケティング部署に所属。 -
監修LITALICOワンダー サービス開発グループ 和田 沙央里(わだ さおり)
監修
LITALICOワンダー サービス開発グループ 和田 沙央里(わだ さおり)2014年3月株式会社LITALICOに入社。5歳〜高校生の子どもたちが通うIT×ものづくり教室「LITALICOワンダー」の立ち上げで渋谷教室の開設当初から約3年間、300名以上の通塾生徒にプログラミングの指導を続けた。2016年度は総務省「若年層に対するプログラミング教育の普及推進」事業のプロジェクト責任者を務めた。現在はカリキュラム・教材開発に携わる。大学では発達心理学・教育心理学を専攻し、卒業後は都内の大手IT企業で金融系基幹システムの開発に従事、現職に至る。
著 :『使って遊べる!Scratchおもしろプログラミングレシピ』翔泳社
監修:『スラスラ読める UnityふりがなKidsプログラミング ゲームを作りながら楽しく学ぼう! 』インプレス社
監修:『子どもから大人までスラスラ読める JavaScriptふりがなKidsプログラミング ゲームを作りながら楽しく学ぼう! 』インプレス社