最終更新日:2023.05.24
公開日:2023.02.20
- 論理的思考力
論理的思考(ロジカルシンキング)とは?鍛える方法や身につけるメリットを解説します
論理的思考力は、教育やビジネスの場面などで近年、重要視されている力です。
しかし、そもそもどのような思考が論理的思考なのでしょうか?
「論理的思考力を身につけることが重要」と言われていますが、「どのようにすれば身につくのかわからない」と思っている方も多いかもしれません。
そこで今回は、「論理的思考とは何か」ということを明らかにしたうえで、論理的思考力を身につけるメリットや、大人と子どもの論理的思考力を鍛える方法についても解説します。
論理的思考(ロジカルシンキング)とは?
学校教育などの場面で、「論理的思考力をはぐくむことが大切だ」と言われるのを聞いたことがある人も多いかもしれません。
またビジネスの分野では、「論理的思考」を英語で言い表した「Logical thinking(ロジカルシンキング)」の必要性が説かれています。
ではそもそも、「論理的思考」とはどのような思考なのでしょうか?
「論理的思考」という言葉には、統一された定義がありません。そこでまず、言葉そのものの意味を見てみましょう。
広辞苑では、「論理的」とは「論理の法則にかなっているさま」と定義されています。
「論理」とは、「議論・思考・推理などを進めていく筋道。思考の法則・形式。論証の仕方」であると説明されています。
これらの定義から「論理的思考」とは、「議論・思考・推理などを進めていく筋道の法則にかなった考え方」と言うことができるでしょう。
もう少し細かく言うと、「思考の過程からあいまいさや不正確さ、思い込みなどを排除し、思考の筋道を整理して、“理にかなった結論”に到達するための思考法」のことであると言えます。
一方、ビジネスの場面で使われる「ロジカルシンキング」は、「混沌としている課題を、最短かつ最適な方法で解決する手法」といった意味合いで使われています。
例えば、マーケティングにおいてロジカルシンキングは重要なスキルだとされており、さまざまなロジカルシンキングの手法が存在します。
論理的思考が必要とされる理由とは?
論理的思考力が重要とされる背景には、社会が今、急速に変化しているという側面があります。
現代は、「第4次産業革命」ともいわれる技術革新のさなかであると言われます。
AI(人工知能)が人間に代わってさまざまな判断をおこなったり、身近な物の働きがインターネット経由で最適化されたりする中で、社会のあり方が今後、大きく変わっていくと予測されています。
例えばAIを搭載したロボット掃除機やスマートスピーカー、ドローンなどはすでに商品化されており、自動運転車は実用化を見据えた研究開発の段階にあります。
また医療の分野においても、最終的に診断をおこなうのは医師ですが、画像診断などの領域でAIはすでに補助的な役割を果たしています。
しかし、これから社会がどのように変化していくとしても、社会をつくっているのは人間であることに変わりはありません。
したがって、時代の変化にも揺るがずに人間らしく生き、社会を発展させていくために必要な力は、従来にはなかった能力ではなく、むしろ人間としての基本的な素養であると考えられます。
そして、その基本的な素養の一つが、論理的思考です。
論理的思考は、私たちが日常的に使っている言葉と深い関わりがあります。
例えば、他の人たちと協力して何かをなし遂げる際の意思決定の過程では、自分の考えを他の人たちに論理的に伝えることで、理解してもらいやすくなります。
同時に、他の人たちの考えを論理的に理解する力も必要となるでしょう。
また、社会が発展していく際には重要な問題を解決していくことが求められますが、その過程では論理的思考が不可欠です。
技術革新により複雑化していく情報を論理的に読み解き、感情や先入観などにとらわれることなく論理的に判断する必要があるためです。
このように論理的思考は、自己実現のためにも、また社会の発展のためにも普遍的に必要な力であり、予測困難と言われるこれからの時代にはいっそう重要となると考えられているのです。
このような未来予測にもとづき、学校教育においては、すでに論理的思考力を身につけるためのカリキュラムが実施されています。
例えば、小学校の教育課程には2020年より、プログラミング教育が組み込まれています。
論理的思考(ロジカルシンキング)を身につけるメリットとは?
論理的思考力を身につけると、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか?
ここでは、主なメリットを3つ挙げます。
意図した通りの結果を得やすくなる
私たちが普段使う言葉は、伝えるべき情報が省略されていたり、あいまいであったりすることがあります。
省略された情報やあいまいな情報にもとづいた判断や予測もしばしば、正しくない結果になってしまいます。
あいまいさや不正確さ、思い込みなどを排除し、筋道を明らかにして考えていく論理的思考にもとづいて判断するようになれば、意図した通りの結果が得られることが多くなるでしょう。
コミュニケーションがスムーズになる
仕事で営業をおこなう場合や、国際的な場面で交渉をおこなう場面など、自分とは立場が異なる人や違う前提を持った人などとのコミュニケーションにおいては、論理的思考が役立ちます。
因果関係を明らかにし、筋道が整理され、根拠のともなう主張をおこなうほど説得力が増し、相手に「あなたの立場」を理解してもらいやすくなります。
主体性が高まる
論理的思考をおこなうようになると、世の中にあふれる情報についても「根拠がともなっているのか?」「因果関係ははっきりしているのか?」などというように、論理的思考にもとづいた目で見るようになります。
このような考え方になると情報を鵜呑みにすることが減り、「自分で判断して、物事をみずから起こしていく」という主体性のある生き方へと変わっていくかもしれません。
主体性もまた、これからの時代を生きていくにあたり重要となる力だとされています。以下の記事で説明していますので、参考にしてください。
論理的思考(ロジカルシンキング)を鍛える方法
論理的思考力は、以下のような方法で鍛えることができるとされています。
科学的な根拠を添える
誰かに何かを伝える際には、そこに科学的な根拠を添えるようにしてみてください。
例えば、「赤く熟したトマトは美味しい」ということは、多くの人が感覚的に知っています。
しかし、「トマトは熟して真っ赤になっていくにしたがい、うまみ成分であるグルタミン酸の量が増えるんだよ」と伝えると、より説得力が増します。
科学的根拠を添えて考える習慣ができると、思考からあいまいさや不正確さも排除することができます。
ロジックツリーで思考を整理する
論理的思考をおこなう際に役立つとされているワークの一つに「ロジックツリー」があります。
ある課題の原因や目的をツリー状に分解して視覚化することで、その課題の論理構造や因果関係を明らかにするワークです。
上部や左端にテーマとなる課題を書き、下部、または右側に向かって、より具体的な要素へと分解していきます。
課題解決の道筋が明らかになりやすくなるほか、その課題の全体像が見えるようになることで、今までとは違った視点が得られることもあるかもしれません。
「エレベーターピッチ」を練習する
「エレベーターピッチ」は、伝えたいことを、30秒間に凝縮して相手に話す方法です。
論理的思考に少し慣れてきた人におすすめです。
ビジネスの場面で使われるロジカルシンキングの訓練法の一つで、世界的に有名なIT企業が立ち並ぶアメリカのシリコンバレーで生まれたとされています。
起業家のビジネスプランが投資を得て実を結ぶためには、「偶然に投資家とエレベーターで乗り合わせた」という一瞬のチャンスにおいて、自分のビジネスプランを投資家に効果的に伝える能力が重要とされています。
投資家を探していない人であっても、自分の考えを短時間で効果的に伝える能力は、さまざまな場面で役立つでしょう。
30秒で印象に残る伝え方をするためには、結論から簡潔に話し、論理もシンプルにする必要があります。
抽象的な表現は避け、具体的な数字や根拠も織り込むとよいとされています。
子どもの論理的思考力を鍛える方法
これからの時代を生きていくために重要となる論理的思考力は、子どものうちから身につけておきたい能力でもあります。
しかし「子どもの論理的思考力を鍛える」と言っても、子どもが「論理的に考えよう」と意識することは難しいかもしれません。
このため子どもには、論理的思考の基礎となる要素を身につけることをうながすとよいでしょう。
例えば読書をしたり、博物館や動物園などに行ったりして知識を身につけ、好奇心を追求する習慣をつけるのもひとつの方法です。
工作やものづくりなど試行錯誤をする体験を通じて「こうしたら、こうなる」という因果関係を学んでいくことも論理的思考の土台となります。
また、2020年より小学校で必修化されたプログラミング教育の目的のひとつは、「プログラミング的思考を養うこと」だとされています。
「プログラミング的思考」には、論理的思考も含まれます。
コンピュータに意図した処理をおこなわせるためには、与える指示を正確に、かつ論理的に考える必要があるためです。
このため、プログラミングそのものを学ぶことも論理的思考を鍛えることになります。
子ども向けプログラミング学習の代表的なもののひとつに「Scratch(スクラッチ)」があります。
Scratch(スクラッチ)は、オリジナルのゲームが作れるプログラミング学習ツールです。
プログラムをキーボードの文字入力で記述するのではなく、ブロックなどを直感的に操作することで、楽しみながらプログラミングを学べる仕組みになっています。
詳しくは、以下の記事を参考にしてください。
子どもの論理的思考を育むLITALICOワンダー
「ただものづくりをしたり、プログラミング学習ツールを使うだけで、論理的思考がうまくはぐくまれていくのだろうか?」と心配に思う保護者の方もいるかもしれません。
より本格的に論理的思考力を身につけることを目指す場合は、子どもを対象とするプログラミング教室やロボット教室の利用もおすすめです。
LITALICOワンダーでは、プログラミング教室とロボット教室を実施しています。
LITALICOワンダーでは、子ども一人ひとりの興味にあわせてカリキュラムがつくられ、専門知識のある講師がサポートします。
子どもが楽しく学んでいくうちに、自然に論理的思考力や創造力がはぐくまれていくでしょう。
教室とオンラインの両方で、無料体験授業もおこなっています。ぜひ、お気軽にお問い合わせください。
論理的思考(ロジカルシンキング)についてまとめ
論理的思考とは、あいまいさや不正確さ、思い込みなどを排除し、思考の筋道を整理して、理にかなった結論に到達するための考え方のことです。
社会は今、急速に変化しています。これから訪れると言われている予測困難な時代においても、必要な情報を選び取って正しい判断をおこない、自分の人生を切りひらいていくために、論理的思考力は重要となるとされています。
論理的思考力は、大人も子どもも鍛えることができると言われています。ぜひ、論理的思考を生活に取り入れてみてください。
- 文部科学省「小学校段階における論理的思考力や創造性、問題解決能力等の育成とプログラミング教育に関する有識者会議」
- 文部科学省「小学校段階におけるプログラミング教育の在り方について(議論の取りまとめ)」
- 文部科学省「論理コミュニケーション トータルロジックス特別版(上巻)」
- 内閣府「第2章 新たな産業変化への対応(第1節)」
- 国立教育政策研究所教育課程研究センター「特定の課題に関する調査(論理的な思考)調査結果~21世紀グローバル社会における論理的に思考する力の育成を目指して~」
- 大石 哲之「3分でわかるロジカル・シンキングの基本」
- 今井 信行「図解入門ビジネス ロジカル・シンキングがよ~くわかる本[第2版] 」
- 高橋 昌一郎・山﨑 紗紀子「別冊 楽しみながら身につく 論理的思考 (ニュートン別冊) ムック」
- 木田 知廣 「プログラミングとロジカルシンキングが一気にわかる本 アルゴリズムで論理の流れが見えてくる」